この女性は、少し変わった人生を送っています。精神世界への関心が幼い頃から強く、仏教系の大学を卒業し、ある大手電機メーカーの専属で人材コンサルタントをしていた方です。日本を代表する大手電気会社の創立者とも親しく、その頃は人生で最も輝いたようです。
しかし、５０歳を過ぎた頃から、事業への欲求が強くなり、結婚相談所を開設し、それまでの仕事の人脈で、大手企業の独身男性を多数会員として獲得し、事業家としてスタートしました。一時は、Ｗｅｂの電話システムを使ったお見合いシステムなどを導入し、業界を騒がせたこともあったのですが、経営が思わしくなく、数年後、突然事務所を閉鎖してしまいました。
さて、この方の場合は、もともと、どういう天賦の才能があったのか、そして、どういう職業に向いていたのか、事業家としてはたして向いていたのかどうか、を運命学ソフトを使って診断してみます。
そして、人生の選択をしなければいけなかったときに、選択ミスはなかったのかどうかを、研究してみましょう。
星平会海とは、古代中国で運命学を究めた道師が奥義として使う占いの方法のことです。『星』とは、ホロスコープのことです。『平』とは、四柱推命のことです。つまり、東洋の四柱推命と宇宙に浮かぶ実際の星をみて占う西洋のホロスコープの両方を縦横無尽に駆使しながら、宿命を占う技術です。
東洋の文化は、『天と人と地』の文明です。つまり、神様と人間は直接対話するものではなく、人と人との関係の中に臨在するというものです。それに対し、西洋の文化は、『天と地』の文明です。つまり、神様と人間は直接対話するものであり、契約関係にあるというものです。ですから、西洋のホロスコープを使って診断できるのは、パーソナリティです（個性）。東洋の四柱推命を使って診断できるのは、人と人との関係のなかで、発揮される能力や適性です。
この方は、冥王星の影響を一番強く受けています。
冥王星は、太陽系の惑星のなかで一番外にある星で、あの世を司ると言われています。この星の影響をうけると、霊的なこと、宗教的なことに、関心を持ちやすく、頑固で、こうと決めたら人の意見に耳を貸さない強情なパーソナリティを与えられています。
次に、社会的な発展はどうかを調べるには、木星をみます。木星単独では、社会的発展はありえまえん。必ず、別の星と作用しあっていなければなりませんが、この方は、海王星とのみ作用しています。海王星は、幻想、夢想、非現実の星です。
つまり、実利を追いかけて社会的発展を目指すタイプではなく、夢を追いかけながら、社会との関わり合いを持つパーソナリティを与えられています。これは、事業をする際には、財務に強い人とパートナーを組まないとうまくいかないことを暗示しています。
印星というアイデア、知恵、企画が得意な星が、非常に強いので、この分野では成功していくことができます。僧侶、大手企業の人事コンサルタントという職業は、天職です。しかし、地支をみると、財星が多いので、生まれついての癖、習慣という面では、商売をしたいという欲求も潜在的にあります。
つまり現実のビジネスで利益を出したいというお金儲けの現実的能力と、アイデア、知恵、企画でロマンや夢を追いかけていくという２つの矛盾した能力を与えられているわけです。
こういう状態を、運命学では、「純粋」でない状態、つまり「不純」の状態と言って、矛盾の結果、凶現象がでやすいと解釈するのです。
今までの説明で、冥王星から宗教的な影響を強く受け、木星と海王星から夢を追いかける影響をうけ、さらに印星というアイデアを生み出す天賦の能力があるいっぽうで、お金儲けもしてみたいという欲求があることは理解できたと思います。それでは、組織の中で雇用されて活躍するのが良いのか、それとも独立して事業家としてやるのが良いのかの判断を紫微斗数推命で診断してみます。官禄宮という、服務能力を司る場所には、紫微（しび）星と天府星という高貴な星が入っていますので、良い組織で高貴な仕事をするのが適性だと示されています。財帛宮という、商売を司る場所には、廉貞（れんてい）星という冷酷な星と天相星という優しい星が２つ入っていますので、心に矛盾が発生します。
ビジネスとして割り切りたいという心理と、人情を優先したいという心理が葛藤しています。結果的には、商売の財帛宮よりも、服務の官禄宮のほうが、より良い状態ですから、独立して事業家を目指すよりも、良い組織に雇用されたほうが幸せになれるということが示されています。
この方の場合、お金儲けをしたいという動機で自分自身がトップになって事業家を目指した時点で、人生の大きな選択ミスを犯したようです。独立して事業をする場合でも、実利面をまかせられるパートナーを探し、自分は企画や交渉事などに専念していけば、良かったのかもしれません。現在、この方は周囲の信頼を失い、健康状態も良くないようです。
ホロスコープでパーソナリティの分析、四柱推命で社会的能力と習慣的欲求の分析、紫微斗数推命で深層心理の分析、宿曜経で宿命の分析、以上の４大占いを融合して、人生の分岐路に来たとき、その方向性を推測することができます。
