己土:寅月生まれ
- 季節と調候
初春の寅月は雪や氷が解けて雨水となるも余寒がまだ残存する季節であるから、丙火(太陽)の照暖(しょうだん)が何よりも必要です。
丙火すなわち太陽の火があれば万物は自ら生じ成長します。
- 己土の性情
戊土は頑固な山岳の土で水気を求めるのに対し、己土は優しい田園の土で人柄は大らかで物事を受け入れる体質をもっています。
- 己土と壬水
己土は壬水を病(やまい)として見ます。
なぜならば壬水は強い大河の水であり、その勢いは優しい田園の土である己土の肥えている表面の土を洗い流してしまう恐れがあるからです。
もし壬があった場合には、山岳の戊で水を制する必要があります。
戊は堤防を作って田園を陽水から防ぐ働きがあります。
命中に於いて壬水を多く見るも戊土の透干があれば、清よらかにして富貴の人としてみます。戊土が無い命は平常の人であります。
- 財官印
寅月生まれは丙火、癸水、甲木の3つの配合をもって喜びとします。
寅月は木気の官星が旺じ、日元は衰弱しているので丙火の印綬を用いて我が身を生扶し、更に調候を得ることにより身強に転じます。
丙火が有れば田畑の己土が乾きますので癸水を補佐として求めます。
即ち、水火既済を以って中和を得ることになります。
- 甲木が強い場合
命中に甲木が多くある(殺太過)場合には、庚金が透干して甲木を制し、加えて丙と癸があれば配合の中和を得ることとなり発展することができます。
もし庚金の制がなければ己土が甲木から損傷を受ける命式となり、残疾があるか、発展が出来ない命となります。
- 戊土が強い場合
命中に戊土が旺じていれば、甲木の正官を用いてこれを制すれば発展することが出来ます。
乙木では山岳の荒々しい土である戊を制することができません。
乙木は草木ですから多くあっても力が弱くて無益です。
乙木が多くあると悪知恵の働き、器が小さい人間となります。
- 季節と調候
己土が卯月に生れるは春の木気が盛んで、陽気もだんだんと満ちてくる季節です。
ただ己土の田園はまだ旺じておらず、丙火の配合を得れば生気が湧いてきます。
土は「火土同根」と言って「土と火」で以って旺じます。
- 印星、官星の用法
卯月は乙木(偏官)が旺じて我が身は衰弱しています。
偏官(殺)が強ければ印星に化して「殺印化格」とすることです。
丙火(印綬)があって、旺ずる木気(偏官)を火気(印星)に流して我が身を生扶して強くなれば、甲木(正官)を用いて制することにより貴を得ることが出来ます。
乙木(草花)では力が弱く疏土(そど=耕す)すことが出来ないので甲木が是非とも必要です。
丙火があって身強であれば甲木を以って田園の土を疏土してやり、次に丙火が有れば乾くので癸水で湿らす必要があります。
即ち、「財星、官星」を用いることができます。
己土が旺じ、さらに甲木(官星)、丙火(印星)があれば大変な勢力がある命として判断します。
しかし壬があれば己土が流されてしまいますからその富貴は小さくなります。
庚金があれば、甲木を制します。
我が身の己土から甲木を見れば、正官ですからこれが潰れてしまいます。
但し、甲木が旺じていれば庚金をもって甲木を制する必要があります。
丙火がなければ貧しく性質が陰的な人となります。
己土:辰月生まれ
- 季節、調候
己土が辰月に於いて生まれるは、雨がよく降って田畑を潤し、百穀の栽培の季節であります。
従って己土に丙火の照暖(しょうだん)と、そして癸水の滋潤があれば穀物を育成するための条件が揃います。
- 財、官、印の用法
辰月に在っては、辰の蔵干に癸水を蔵しているので、先に丙火を取用して後に癸水を用とします。
己土が身強であるならば甲木をさらに求めます。
己土が戊土と丙火を天干に見れば、己土は戊土の気勢があると見て甲木を用いて制します。
即ち、己土の辰月生まれは、丙火(印星)、癸水(財星)、甲木(官星)の3つが天干に並ぶのを最上とします。
この3つのうち1つでも天干に有って、2つが地支にあれば富貴を得ることができます。
丙火を用いる場合は、壬の制があってはいけません。
癸水を用いる場合は戊、己の制があってはいけません。
甲木を用いる場合は、庚金の制があってはいけません。
以上 命式にとって必要な干支を損傷しなければ富貴の命であるということが言えます。
用神(喜神)の取り方
甲、丙、癸の用法は、命造に土が多ければ先に甲木を取用します、命造が暖燥となれば先に癸水を取用します、命造が湿潤であれば先に丙火を取用します。
己土:巳、午、未月生まれ
- 季節と調候
己土は田園の土です。
夏月は陽気が盛んで日照りが続き、土は乾燥して燥土となりますので気候の調和が何よりも必要です。
癸水(雨露の水)は田園が乾燥して亀裂を生じない様に潤沢します。
次に己土は丙火を必要とします。
己土は夏でも太陽の丙火がないと穀物を育てることが出来ませんので丙火は必要です。
- 印星、財星用法
巳月の己土は調候を求めますので癸水(偏財)を以って「用神」とします。
命中に於いて丙火と癸水を見て相互に妨げず、そして辛金が加わって癸水を生ずるは癸水に根が有るとみます。
夏は水が枯れやすいので水源である辛金(食神)があれば癸水を扶けますので良好とします。
故に己土の夏月は丙火(印星)と癸水(財星)が天干に有って相互に妨げなければ上等の命となります。
己土が丙火(印綬)を得て、自然に旺じた後に、食神−財星と用いる命は水火既済(すいかきさい)となって富貴の格であります。
癸水を用いる場合、戊土が天干にあって癸水と干合して用神を傷めないことであります。
癸水がない場合は壬水でも使えますが、その発展は小になります。
- 水が無い命
命中に於いて丙丁火が多くあって壬癸水の救いが無ければ火炎土燥となり田園は亀裂が生じて乾土となります。
水が欲しい夏月に水が全くない命式は必ず貧であり、孤独の人となります。
己土:申月生まれ
- 季節、調候
己土が申月に生れるは、朝晩はところにより涼風が感じられる季節となり、五行の金気が大変旺じています。
従って先に丙火の照暖(しょうだん)があって、次に癸水が欲しい季節となります。
- 傷官生財の用法
月令「申」の蔵干に庚金(傷官)と壬水(正財)があるので、我が身の生気は洩気して衰弱してます、従って丙火(印綬)を以って我が身の己土を生扶する事が必要です。そして癸水が透干するならば上格として看ます。
身強の命は月令に庚金(食傷)が旺じるので、先に癸水(偏財)を用いて後に丙火を取用する事です。
但し、癸水と丙火が透干して並び見て傷めないことです。
身強で傷官があれば「傷官生財」と流通させることで発展が出来ます。
- 癸水と丙火
秋は金気の傷官が旺じるので、癸水の偏財は傷官の気を洩らし己土の精神を補います。
即ち、旺気が傷官の凶星で止れば人生に悪い影響が出てくるので水の財星へ流すことです。
丙火(印綬)も金を制する作用があるので、己土の精神を補う働きがあります。即ち、「傷官佩印」となるのです。
水と火のいづれが欠けても大きな発展を見ることはできません。
己土:酉月生まれ
- 季節と調候
己土の酉月はお彼岸の季節で金気が旺じて月令は食神となります。
金気が旺ずることは、我が身は洩気して衰弱しています。
故に、我が身を生扶する丙丁火を得ることにより生気が湧いてきます。
- 食神生財
もし地支が巳酉丑と金局を成して、癸水が天干にあり地支に根があると、「食神生財」になりますが、我が身は身弱でありますので必ず丙丁火の印星を求めるか、我が身が旺ずる運へ向かうを求めます。
身強の食神生財は、食べる、着る、住むといった衣食住に困ることはありません。
- 印星、比劫
命式の地支に印星があると、印星は我が身を助けます。
命式の地支に比肩があると、比肩は我が身と同気ですので、我が身が強くなります。
従って印星と比肩があると、富を得ると同時に、貴を得ることができます。
- 金が旺じる
地支が金局して金が旺じる場合は、我が身の生気を洩らし尽くして衰弱の命となり発展が不可能となります。
もし丙、丁の生扶と制がないと、志を失って孤独な命式となります。
丙、丁の制がない場合でも、癸水があれば金気を水に洩らすことができ、水は土から見れば財となりますので、財を得ることができる命式となります。
己土:戌月生まれ
- 季節と調候
己土の戌月は晩秋となり何となく淋しく見える季節となり、五行の土が大変旺じています。
戌土は丁火を蔵し燥土でありますから、癸水で以って潤沢するを必要とします。
晩秋に金水が多く有れば「金寒水冷」とにり寒が進みますので丙火の照暖を求めます。
- 財星、官星の用法
戌月は己土が旺じているので甲木の疏土(そど=土をほぐす)が必要になります。(日干が旺ずれば制するか洩するかが必要です。)
しかし甲木は秋月においては絶地で気勢が休囚して弱いので、水で以って甲木の官星を扶助しなければなりません。
戌月は甲木(官星)が天干にあって干合しておらず、癸水(財星)の助けがあると水−木と甲木を扶けて良い仕事を得ることができます。又甲木が土の比劫を抑えるならば財星を護り富を得ます。
なぜならば、土から木を見ると官星で、土から水を見ると財星になるからです。
- 金が旺じる
秋の己土は金気(食神)が旺じますので、気を洩らして我が身が衰えます。
従って、丙、丁火は(印星であり、調候です)を用いて己土の扶助を得ることが必要です。
丙、丁火がなく、しかも地支に金が旺ずる命式であれば、我が身の己土の気を洩らすばかりですので、寒気が旺じ寒々とした命式となって孤独で苦しみが多い人となります。
- 食神生財格
丙火(印星)が天干にあって、癸水(偏財)が地支の蔵干にあって、さらに水を生ずる金(食神)があった場合は、食神生財格の命式となって発展する人となります。
- 火が旺ずる場合
地支に火の勢いが強いと甲木が天干にあっても、火の旺ずるを助けるのみで土を疏土(そど=土をほぐす)するという本来の作用を失ってしまいます。
この場合は水の救いがないと、旺ずるだけの偏屈な作りとなって人格が良くありません。
亥、子、丑月生まれ
- 季節と調候
己土の冬月は、こがらしが吹き荒れ田園の土は氷結して万物はすべてが休囚する季節です。
従って己土は丙火の照暖(しょうだん)がなければ生気が得ることができません。
故に調候用神である丙火が最重要となるわけです。
但し、丙火を傷める壬癸水を横に見ないことです。
- 丙火(太陽)
冬の丙火は絶していて力が弱いので地支にあるだけでなく、必ず天干にあって通根(天地一体となる)するか、甲木ので生扶がなければいけません。
命式において官星、食傷、財星を使うにしても、冬季は丙火の照暖を絶対に欠かせません。丙火が無いと己土本来の生気が萎縮してます。
- 丁火
丁火は丙火と同じく火という五行です。
しかし、その性質は人工の火ですから、太陽の丙火のように寒を和らげる力はありません。
しかし丙火がなく丁火しかない場合でも、丁火の燃料である甲木が多くあれば丙ほどではないにしろ、暖をとることが可能になります。
- 財太過
命中に於いて壬水(財)が多くあるも、戊土が透干して之を制するは財星を抑えてバランスが良くなり発展が出来ます。
戊土が無ければ財太過の命となり「富屋の貧人」で一時的には発展出来ても身体が弱り、財は身に付かず貧となります。
時
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日
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月
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年
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甲(偏官)
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己
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戊(劫財)
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庚(傷官)
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土化干合
=>月令得ておらず変化しない
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−
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−
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子
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酉
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寅
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午
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(水)
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(金)
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(木、火)
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(火)
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- 木:天干に甲、 地支に根が1コ
- 火:天干になし、 地支に2コ
- 土:天干に戊、己 地支に根がなし
- 金:天干に庚、 地支に根が1コ
- 水:天干になし、 地支に1コ
- 日主の己に根がなく、身弱です。
- 時上の甲木は、年上の庚金から伐採されています。
従って、月上の戊土を滑らかにする役割を果たせません。
- 従って我が身の土を漏らす、金を忌神とし、甲木を扶助する水を喜神とします。
- 原書には、本命は壬―午、癸―未 の運の時に発展したとあります。
例題
時
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日
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月
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年
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丙(印綬)
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己
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丙(印綬)
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戊(劫財)
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寅
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卯
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辰
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寅
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3局木化
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−
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(木、火)
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(木)
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(木、水、土)
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(木、火)
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- 木:天干になし、 地支に根が4コ + 3局木化
- 火:天干に丙、丙、 地支に根が2コ
- 土:天干に己、戊、 地支に根が1コ
- 金:天干になし、 地支になし
- 水:天干になし、 地支に1コ
- 日主の己に根が1コあり、我が身の土を生じる火も強いので身強です。
- 身強であれば、我が身の土を制する甲木が喜神となりそうです。
- しかし甲木があると、さらに木->火となり印星の火が旺じ、我が身が旺じます。
- 従って、この場合は、土気を漏らす金を使う方法が良いのです。
- 原書には、大運が庚―申、辛―酉で巨万の富を得たとあります。
- しかし殺の官星を使うことができないので、良い仕事には恵まれなかったとあります。
例題
時
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日
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月
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年
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−
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己
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辛(食神)
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庚(傷官)
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−
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卯
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巳
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午
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−
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(木)
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(火、金)
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(火)
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- 木:天干になし、 地支に1コ
- 火:天干になし、 地支に2コ
- 土:天干に己、 地支に根がなし
- 金:天干に辛、庚、 地支に根が1コ
- 水:天干になし、 地支になし
- 日主の己に根がありません。
- 我が身の土気を金気に漏らすばかりの命式です。
- 月上の食神と年上の傷官は2つ並ぶと、傷官的な意味あいが強くなります。
- 傷官=傲慢、鋭い感性です。
- 本命は、運送業を営む。
例題
時
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日
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月
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年
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戊(劫財)
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己
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壬(正財)
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己(比肩)
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辰
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卯
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申
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巳
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(木、水、土)
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(木)
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(金、水)
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(火、金)
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- 木:天干になし、 地支に2コ
- 火:天干になし、 地支に1コ
- 土:天干に戊、己、己、地支に根がなし
- 金:天干になし、 地支に2コ
- 水:天干に壬、 地支に根が2コ
- 日主の己に根が1コありません。
比肩、劫財がありますが根がないので、我が身は強くありません。
- 従って、火がこの命式にとって喜神となります。
- 原書には、大運が丙火になった時発展したとあります。
例題
時
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日
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月
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年
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甲(正官)
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己
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丙(印綬)
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甲(正官)
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子
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丑
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子
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戊
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(水)
|
(水、金、土)
|
(水)
|
(金、火、土)
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- 木:天干に甲、甲 地支になし
- 火:天干に丙、 地支に1コ
- 土:天干に己、 地支に根が2コ
- 金:天干になし、 地支に2コ
- 水:天干になし、 地支に3コ
- 日主の己に根が2コあり、身強です。
- さらに我が身の己土を生じる火の印星もあります。
- 旺じた我が身の己土を制する甲木もあります。
- つまり、大変に美しい命式であると言えます。